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「やれやれ……。えらい目に遭ってしまった」
義兄さんの心の友だという、昴さんからレクチャーされたこと――。
『穂高くんはイケメンで図体もアレも程よく大きいけど、心が滅茶苦茶小さくて弱いよな。残念ながら』
撫で擦った俺の胸元を、拳でトンと突くように軽く殴る。
「俺のようなヤツが相手なら怖いのも分かるが、義兄の昇さんに逃げの姿勢ってどうよ?」
「逃げの姿勢?」
言ってる意味が分からず、バカみたいなオウム返しをした。空気が読めないのにも程があるな。
「おぅよ。恋人の名前をしれっと呼び捨てにされて、あからさまにイラッとしただろ。そんな態度を出したのに、さっさと逃げたじゃないか」
「確かに……。イラッとはしましたけど、そこまで騒ぎ立てるものじゃないですよね」
「穂高あのときのお前、嫉妬心を思いっきり目で表していたのに、そんなことを言うとは。大人になったというべきなのか、俺に弄られるのが恐かったからなのか」
俺の言葉に呆れたような声色で、ブツブツ言う義兄さん。
「俺は絶対にイヤだね、そんなの。たとえ昇さんでも、迷いなく交戦すっけどな。好きな相手を自分のモノみたいに言われたり扱われたりするのは、やっぱり許せないと思わないのか?」
「はぁ、まあ……」
「この場に恋人がいて一部始終を見ていたら、どうなっていたか。怒りを抑えて変にカッコつけたお前を見て、愛されているんだろうかと愛情疑われるぞ、間違いなく」
「……別に、格好つけてるワケじゃないですけどね」
俺のすべてを知り尽くしている義兄さんだからこそ、しなくていい争いを避けたかっただけなのだ。
「その言い方も、実際カッコつけてるよなぁ。しかも目に出てるぜ、内心すげぇ焦ってるのが」
「焦ってなんて――」
「いいや、超絶焦ってるね。次はどんな図星を指してくるだろうかとハラハラしながら、焦りまくってるよなぁ穂高くん」
いきなり子どもをあやすように頭を撫でられてしまい、困惑するしかない。
「俺たちの前だから、カッコつけたがるのも分かる。だがな、恋人の前ではそんなモン脱ぎ捨てちまいな。カッコつけて心の内を隠すと、恋人にいらない誤解を与えさせるだけなんだ。言葉で気持ちを伝えていても、すべてを伝えきれないからこそ、すれ違いが生じてしまうんだぜ」
どこか悲しげな表情を浮かべながら話してくれる内容に、じっと耳を傾けた。
「千秋ってコは、お前の前でカッコつけたりするのか?」
「……しません。俺に向かって、素直に気持ちをきちんと表してくれます」
出逢ったときからそうだった。そして今も……。最初はあんなに毛嫌いしていた俺に、たくさんの愛情を注いでくれている。
『好きだよ、穂高さん』
そう告げられるたびに、心臓が絞られるように軋んでしまうんだ。俺を見つめるキレイな瞳が千秋の気持ちを表していて、幸せを感じてしまう。心のすべてを癒してくれる大切な存在――。
「恋愛はケンカと似ていてなぁ。相手から目を逸らしたら負けなんだ。どうしてだと思う?」
相変わらず俺から視線を外さず、挑むように見つめる視線に負けないように、目力を込めて睨み返してみた。
「そうですね。目を逸らしたら、相手がどんなことを考えているのか。次はどんなことを仕掛けてくるのかが、分からなくなるからでしょうか」
「正解、さすがは昇さんの弟。頭いいなぁ」
くすくす笑ったと思ったら、俺の頭を撫でている手を使って、いきなり顔面を鷲掴みされてしまった。
「いぃっ!?」
大きな手で力いっぱい顔を潰す勢いで鷲掴みされる理由が、さっぱり分からない!
――痛い……痛すぎるっ!
「ほどほどにしてやってくれよ。こう見えても穂高は弱いんだから」
「あぁ!? だから痛みに対して、強くしてやってるんじゃないか、なぁ?」
なぁって聞かれても、こんなので強くなれるとは到底思えない。何を考えてるんだ、この人。
「あっ、あのっ、痛いです。離していただけませんか?」
掴んでいる腕に両手をかけたのだが、まったく歯が立たない。相当、鍛えこんでいるんだろう。
「何だよ、俺は腕1本なんだぜ。お前は2本も使ってるのに、こんなの外せないのか?」
「あ~あ。顔が潰されちゃうかも。素人相手にヤクザの全力とか、大人気ないんじゃない?」
「何を寝ぼけたこと言ってんだ、昇さん。俺みたいな相手に簡単に負けるようじゃこれから先、世の中の人間に叩かれて、恋人共々真っ逆さまに落ちるんだぜ」
(千秋と一緒に、真っ逆さまに落ちる――?)
「その両腕を使って、恋人を守っていくんだろ? 自分を守れない人間が、大切な誰かを守ることなんて、到底できないだろう。なぁ?」
男の指先が更に皮膚に食い込む感覚を感じながら、両腕に渾身の力を入れてやった。掴んでる腕をぎりぎりと絞り上げながら引っ張ってみると、呆気なく外される。
「っ……。腕の筋が変になるかと思った。やるじゃねぇか、頭を使った力技」
「俺の顔も少しだけ潰れたかもです。恋人に振られたら、慰謝料を請求しますよ」
顔を撫で擦りながら言うと、手首をぷらぷらさせて嬉しそうな笑みを浮かべた。
「漁師って仕事も大変だろうけどさ、それ以上に男同士で生きていくのは、いろいろと周りから突っ込まれるからさ。機転利かせながら守りつつ、恋人には腹の内を全部晒しておけよ、なっ!」
なっ! の部分でいきなり伸ばしてきた男の腕を、寸前のところで慌てて掴み止める。
「穂高くん、何で止めるんだ。せっかく自分の見立てを、この手で確かめようとしたのになぁ」
「確かめないで下さい。潰されたら、それこそ死んでしまいます」
残った片手を使われたら、それこそお終いだ――大事な部分が潰されてしまうかもしれない。
「なりふり構わないその感じ、最初のときよりもいいわ。必死さが目から伝わってくる。それでいいんだ」
ひとり納得した顔して、あっさりと腕を引っ込めた。
「その感じ、忘れんじゃねぇぞ。結構大事なんだ、それ」
「はい、有り難うございます。それじゃあそろそろ時間なので、失礼します!」
告げられた意味が正直よく分からなかったが、また何か奇襲をかけられても対処に困ると考え、さっさとここから立ち去るべく頭を下げて、事務所をあとにした。
扉を閉めた瞬間、大声で笑うふたりの声が扉から漏れ聞こえる。
(――俺、からかわれたのか?)
さっきまで行われたことをしんみりと思い出している間に、千秋がバイトしてるコンビニに到着した。遠くから見ても簡単に見つけられる、愛おしい君の姿。楽しそうに仕事をしている千秋を見つめるだけで、自然と口元が緩んでしまうんだ。
そんなことを考えながら腕時計を見たら、あと数分でバイトが終わる時間を指していた。
(出てきたところを驚かせてやるか。それとも、家の前までついて行ってから驚かせてやるか。どっちが驚いてくれるだろうか?)
ワクワクつつ、車を駐車場に停める。そしてコンビニの影に自分の体を隠して、どうやって驚かせてやろうかと考えを巡らせていたら、千秋の声が外に響いて聞こえてきた。
ハッキリと聞こえてきたのだが――
「……どうして男と一緒に歩いているんだ、千秋」
両手にビニール袋を提げて、実に楽しそうな感じで男と喋っていた。黙って、その様子を窺うしかない。
「ゆっきーからメールが着てるよ。もう家の前にいるってさ」
「早っ! この蒸し暑い中を、ずっと待たせるのも悪いから急ごう」
「急ぎたいのは山々だけど、振動のせいで開けた途端に、ビールが大爆発するかも」
「それは勘弁だよな。アキさんの家がビール臭くなっちまうから。程よく急ごう!」
ふたり仲良く並び、急いで歩く後姿に声をかけられない状態だ。しかもこれから千秋の家で宴会をするような話に、思いっきり困惑するしかない。
「どうする……。今夜はもう、千秋の家には泊まれないだろうな」
50メートルくらい距離をとって、とぼとぼ後ろを歩いた。あとをつけたところで、中に入れないことは明確――君が楽しそうに笑っている姿を見られるだけでもあり難いことだというのに、どうしてこんなにも悲しい気持ちになるのやら。
あ~あと気落ちしているところに、隣の男が飲んでいたペットボトルを押しつけるように千秋に手渡した。
離れているので何を喋っているのかは分らないが、千秋が困ったような顔をしたのはすぐに分かった。熱心に何かを言って説得する男に、無性にイライラが募っていく。
やがて諦めた表情を浮かべて、渋々ペットボトルに口をつける千秋。
「あ……!」
「んっ?」
思わず漏らしてしまった大きな声に、千秋が反応して後ろを振り返った。その動きに慌てて人様の庭先に入り込んで、口元を押さえながらじっと身を隠す。
変に静まり返るからこそ、ふたりの会話が耳に聞こえてきた。
「どうしたの、アキさん?」
「何か……。誰かがいたような気がして。それにしても思ってた以上に、これ美味しいかも」
「でしょでしょ! 意外とイケるんですよ、イチゴクリームソーダ」
あ~あ千秋のヤツ、その男と間接キスしちゃった。何気に美味しいとか言ってるし。
「この甘酸っぱさが、バイトの疲れを癒してくれそうな感じだね。ありがと」
「どういたしまして……。まだ後ろを見ちゃって、気になるんすか?」
「うぅん、ちょっとね。聞き覚えのある声が聞こえた気がして」
(――仕方ない、とっておきのワザを繰り出すか――)
「に、にゃあぁんっ! んにゃっ!」
島にいる、ネコの鳴き声を真似してみた。滅多に真似しないので、似ているかは不明である。
「アキさん、ネコがいるみたいっすよ」
「ネコ……なのかな?」
「だって、にゃあって鳴いていたし。どんなコだろ。俺、ネコ好きなんっすよ」
こちらに近づいてくる足音が耳に聞こえてきて、自然と体が強張った。
「しましまかな、それとも真っ黒かな。確か、この辺から声が聞こえたっけ?」
コツコツと歩く靴音とともに、塀越しから男の声がハッキリと聞こえてきて、マズイ・ヤバイ・絶体絶命の文字が頭の中に次々と浮かんだ。いっそのこと男を巻き込んで驚かせてやったら、千秋がぶっ飛ぶかもしれない。
ええぃ、もうやってしまおうと腰を少し上げて、声を出しかけた瞬間、
「竜馬くん、人ん家に勝手に入ったりしたら不審者だからね。住居不法侵入で逮捕されちゃうよ!」
「まあ、そうなんですけど。でもネコの顔をちょっと見るだけ、いいでしょ?」
よし千秋、ナイスアシスト! 住居不法侵入は立派な犯罪だからね。(自分が犯していることを理解していない穂高)
右手親指を、塀の向こう側にいる千秋に向かってグーをしたら。
「あんな変な声を出すネコ見たって、きっとロクなもんじゃないと思う」
――ロクなもんじゃない、ネコの鳴き真似をした俺って( ̄□||||!!
ショックのあまり声が出そうになり慌てて口元を押さえたら、隠れている茂みがガサガサと大きな音を立ててしまった。
「ほらほら、俺たちの話声を聞いて、ネコがどこかに行ったみたい。早く家に帰ろうよ、ゆっきー待たせてるんだから」
「はぁい、残念だったなぁ」
靴音が聞こえなくなるまで、その場で待機した俺。結局この日は、カプセルホテルへ泊まることにしたのだった。
「チョコが途中で割れないようにぷちぷち包装OK、手紙も入れ忘れしないようにっと」 働いてるコンビニでバレンタインフェアが始まってから、急がなきゃという感じで用意したチョコレート。お酒好きな穂高さんに合わせて、ウィスキーボンボンの詰め合わせを買ってあげたんだ。 ついでといっては何だけど、いつもお世話になってる船長さん用に、日本酒の入ったチョコも添えてみた。分かりやすいように宛名をつけて――。「喜んでくれるといいな、穂高さん」 別れた後だった去年のバレンタイン。大好きなのに渡せなかったからこそ、今年は無駄に力が入ってしまう。「あとは、大手通販会社から取り寄せた『ホットコット』を入れてあげてっと。意外とかさ張っちゃうな」 張り切ったせいで用意していた箱の中が、ぱんぱんになってしまった。 コンビニで販売している雑誌で、新製品を試供しまくり酷評している特集記事を見つけたので、休憩時間に購入して読んでみたら、CMで話題のあの製品の保温率がそんなに高くないことを実験結果で知り、1番あったかい商品として紹介された物を、自分用と穂高さん用に通販で買ってみたんだ。 実際に着てみると、想像以上に着心地がいい上に軽くて温かい――さすがは、ナンバーワンと称されたことはある! 寒空の下、冷たい海の上で仕事をしている穂高さんにピッタリだよね。 温かいことが実証されたので追加注文して、穂高さんの分を数枚購入。通常の商品よりもお財布に優しくて、すごく助かってしまった。「本当はバレンタイン当日、俺があっちに行って直接あたためてあげたら、喜んでくれるんだろうけど」 2月は節分に使う豆や恵方巻き販売、そしてバレンタインと毎週イベントが目白押しで、バイトを休むことが出来ないんだ。「チョコはいいとして、バレンタインにあったか肌着をプレゼントするのは、正直色気がないけれど、あの穂高さんでも俺が体を気遣ってることくらい分かってくれるよね」 あるいは――。『これを脱がせたいから、送ってくれたのかい?』 なぁんて幻聴が聞こえてしまったのは、一体何でだろう?「それを言わせないための、爆弾投入して終了!」 アクセントとして小物入れになってる、キ○ィの顔の形のガラスケースを用意してみた。小物入れ部分には予め、小さなチョコが入っている。食べ終えたら好きな物を入れてくださいねって、手紙に書
*** なんだかんだで夕方までしっかり康弘君に拘束されて、遊び倒してしまった。穂高さん、寂しがっていないだろうか?「寂しさのあまり、康弘くんに嫉妬しなきゃいいけど……ただいま!」 引き戸をガラガラっと開けて大きな声で言ってみたのに、穂高さんが出てこない。それだけじゃなく薄暗い家の中、明かりも付いていない状態だ。「……でも靴はあるから穂高さん、家にいるな。トイレに引き篭もっていたりして?」 あれこれ考えながら引き戸を閉めて靴を脱ぎ、家に足を踏み入れた瞬間だった。「お帰りなさいませ、千秋様。おしぼりをどうぞ!」 居間に続くドアが音もなく開け放たれたと思ったら、ビシッと決めまくった穂高さんが頭を下げながら、ずいずいっとおしぼりを差し出してきた。「ええっ!? な、何……一体」 ――いきなり、何のイタズラなんだよ!?「今宵は千秋様のお相手をさせていただきます、穂鷹(ほだか)と申します。以後、お見知りおきを」 強引におしぼりを手渡され、反対の手には名刺らしきものを握らされた。「……ホストクラブ、ラバーズ、店長兼ホスト、穂鷹。何ですか、これ?」 あまりの展開についていけずに、思いっきり呆れ返るしかない。「慌てふためくことはない、安心してくれ。俺が勝手に、千秋に尽くしたいだけだから」「尽くしたいからって、何でそれがホストクラブになっちゃうの?」「尽くすと言えば、ホストクラブだろう?」(――どうして、そうなる!?)「あのね、穂高さん。俺は普段から、すっごく尽くされまくっているよ。だからこんなことをわざわざしなくても、大丈夫だから!」 おしぼりをぎゅっと握りしめてこうやって力説しても、彼には伝わらない可能性が高い。ちょっとだけ常識とのズレがあるせいで、何度も苦労させられているからこそ分かってしまう事実に、言葉が続かなかった。 焦る俺を見て、何故だか魅惑的に微笑む。この笑みが正直、厄介なんだよな――。「夏休み最後の思い出に千秋には是非とも、ホストクラブの体験をしてほしくてね」 言い淀む俺を尻目に素早く腰を抱き寄せてきて、居間に導いてくれる穂高さん。薄暗い中に、オシャレな形をしたキャンドルが点々と置かれていて、炎を揺らめかせていた。 キャンドルという小物ひとつでムードが漂っている様子を、息を飲んで見つめるしかない。 ――見慣れた部屋が、全然
***『我慢している穂高さん、大人(^^)』 なぁんていう読者さんから、あり難いコメントを戴いたのだが――。 あの時、千秋のパンツ(分身)を手にしていなければ、あんな風に笑っていられなかったと思う。あれがもし自分のパンツだったなら、きっと計画倒れになっていただろう。 ――千秋を外に出さず、ずっと傍にいさせただろうから。 そして現在誰もいない家の中、千秋が着ていたパジャマを手に洗濯機の前に佇んでる俺って……。「早くシーツと一緒に洗濯してやり、外に干さないと乾かなくなってしまうのが分かるというのに、寂しさのあまり手放せないとか」 自分から千秋を追い出しておいて、この有様なのである。思う存分に、パジャマに頬ずりをしてから。「エイ!(*`◇´* )ノ ・゜゜・。」 手荒く洗濯機に向かって放り投げ、音を立てて蓋を閉めてスイッチON! 故にまーったく、大人じゃなかったのです。みんなの期待を裏切ってしまい、大変申し訳ない←見えない誰かに、必死に謝る穂高氏「これで心置きなく、作戦が遂行できる。名付けて『千秋、はじめてのホストクラブ体験☆』」 洗濯機の前から身を翻し、らんらんらん♪とスキップして居間に移動して、引き出しからアロマキャンドルを取り出した。間接照明代わりに使おうと、ちゃっかり用意していたんだ。 どこら辺に配置すればムードが漂うだろうかと、うんうん唸りながら考える。暗すぎても明るすぎても駄目、バランスが大切だからね。 ベストな配置にセットしてからテーブルの前に座り込み、予め用意しておいた名刺くらいの大きさの厚紙を眺めた。「さて、と。ホストクラブの名前を、どんなものにすべきか。千秋が好みそうなものは、何だろうな」 島にいるから『愛らんど』なぁんていうのを考えたのだが、明らかにキャバクラっぽくて笑えない。「ここは安易だが、LOVERS~ラバーズ~で手を打とう!」 義兄さんのネーミングセンスが、実に羨ましい。Paradise(パラダイス)やシンデレラだの、ホストクラブの名前にはピッタリ過ぎる。 ブツブツと独り言を呟きながら厚紙に、店名と名前を書いていった。 他にも必要な物を用意し、千秋がいつ帰って来てもいいように準備する。昔着ていたホスト服を身につけ、髪型もビシッと整えて鏡の前で微笑んでみた。「千秋が楽しめるように、しっかりとサービスし
穂高さんと一緒に線香花火を楽しみ、オマケと称して外でも楽しんでしまい――(穂高さんがコソッと言ったんだ、これはオマケだよって) その後、何故だかキ○ィのパーカーを無理矢理に着せられてしまった。 コスプレさせられた腹いせに家に帰ってから、穂高さんを襲ってやったんだ。押し倒した俺の顔を仰ぎ見る顔が、嬉しそうなことこの上ない!『ほらほら、どうしたんだい千秋? お口も手も、さっきから止まっているが』「やっ、こっ、これからが本番だって」『ほほぅ、本番ね――服を着たままヤろうなんて、さっきの続きをしようと考えていたりするのかい?』 フードに付いてるネコ耳が、ふるふると震えているよ。なんて言われてしまい、ますます恥ずかしくなってしまった。『そんな格好で扇情的な顔をされたんじゃ、ある意味拷問に近い。俺のココが、千秋を求めてるのを分かっているクセに。ワザとこんな風に焦らすなんて』 言いながら、ぐいぐいっと下半身を押し付けてくる。 窓から入ってくる月明かりで穂高さんの表情が、とても切なげにしているが見えても、恥ずかしさを妙に意識してしまってから、指先ひとつすら動かせないとか……。『ね、前と後ろ、どっちからがいい?』「へっ!?」『ネコ耳フードを被ったままの君を、どうしてヤろうかといろいろ考えたのだが。アングル的に、どちらも捨てがたいくらいにオイシイな、と』「……オイシくないです」 何でこれ被ったままスる前提でいるんだ、この人は――『よし、両方試してみようか!』「えぇっ!? ちょっ、待っ――うわぁあっ」 居間の床の上へと俺の身体を簡単にチェンジした穂高さんに、驚いたり呆れたり。『腰が痛くならないように、クッションを敷かないとね。まずは、前からトライしてみようか。千秋の感じる顔、たくさん見たい』「もぅ、たくさん見てるクセに」『何を言ってるんだ。今の姿は、普段見られないものだろ。ただでさえ可愛いのに、そんな格好をしているからどうやって啼かせようか、いろいろ考えてしまってね。ふっ』 しまったと思った時には既に遅く、穂高さんの手によって散々感じさせられ、出なくなるまで絞らされる展開に発展してしまったんだ。 そんな状態だったので目が覚めた時には、お昼近くになっていた。隣で寝ていたであろう穂高さんは、とっくにいなかったのである。「俺なんかよりも充分に
*** ザザーン……ザザーン……パシャッ… さっきまで聞こえなかった波の音が、耳に心地よく響いてくる――それだけじゃなく、火照った身体を冷やしてくれるような気持ちいい風を感じることが出来て、ゆっくりと目をつぶった。「千秋、寝ちゃダメだよ。風邪を引く」 後ろから抱きしめている穂高さんが腕の力を強めつつ、俺の身体を揺り動かす。この温もりがあれば、絶対に風邪なんて引かないと思うのにな。「寝てないよ。ただ感じていたかっただけ、五感全部を使って覚えておきたかったんだ。夏休み、最後の思い出に」「……まだ、感じ足りなかったのかい?」 その解釈の意味が分からない。俺の台詞が、おかしいのだろうか。「もう、感じまくっていたのを知ってるクセに、どうして足りないなんて言えるのかな……」 呆れた声をあげた俺を宥めるためなのか、うなじにキスを落してきた。そのせいで、さっきまでの出来事を思い出してしまう。『くっ…ちあ、き。気持ちいいかい?』『んんっ、はぅ……んぁっ、は、あぁ――』 外でいたしているというのに、容赦のない4点責めに喘ぐことしか出来ない自分。背後から穂高さんの指を口の中に突っ込まれている時点で、マトモな答えが出来るハズがない。『ね、いつもより締めつけているのは、俺を早くイカせようとしているから? すごくっ……キツい、よ千秋』『ひがっ…あぁあぁ、ぅあっ……んっ!』 耳元で囁きながら耳の穴に舌を突っ込み、ぐちゅぐちゅ責め立てるとか本当勘弁してほしい。 前回はお酒の勢いが手伝ったから、いつもよりハメを外してしまったところがあったけど、今は羞恥心が勝っていて、落ち着いてなんていられないというのにな。 それをぶち壊すためなのか、いきなり始まった4点責めで、それをどんどん壊されていった。 穂高さんの右手は俺の舌先を感じるように弄び、吐息をかけながら耳周辺をペロペロしながら、反対の手は俺のをしっかりと握りこんで、ゆっくりと扱いている。 これだけでも充分すぎるくらいなのに更に俺を乱そうと、強弱をつけて中をかき回す穂高さん自身に、どんどん堪らなくなっていったんだ。「んぁっ…ほらか、さ…あひがっ、つらぃ」 ずっと立ち膝の状態でいたせいか、ガクガク震えてきてしまい立っているのがやっとだったので、言葉にならない声を出し哀願してみる。「もう少しだったのに、残念だな
『穂高さんっ、白々しい演技は止めてください。この間は酒の勢いとかいろんなものが手伝ったから、ここでしちゃったけど、もうしませんからね』「何をだい?」『穂高さんってば、もう!!』 テレが頂点に達した千秋がうがーっと声を荒げたので、誤魔化すべく左頬にちゅっと音の鳴るキスをしてあげると、いきなり大人しくなってしまった。「やっぱり可愛いな、千秋は」 何をすれば大人しくなるのか、分かっているモノ勝ちだ。 内心ほくそ笑みながら千秋の手を掴み、そのまま砂浜へと引っ張って行く。ゆったりと歩いて進んで行くと、月明かりに照らされた足元にあるそれが光り輝いた。「おっ、いい物発見」 薄暗がりで仕事をするようになってから夜目が利く様になったお陰で、こういった嬉しい発見が出来ることが増えた。勇んでそれを拾い上げ、見えやすいように千秋の目の前にそっと差し出してあげる。『貝殻?』「ん……。ロウソクの土台に、ピッタリかと思うのだが」『よく見つけましたね? こんな暗い夜なのに』 確かに月が照らしていたといっても、ものすごく頼りなさげな三日月だったが、貝殻が白いお陰もあって、簡単に見つけられたのだと思われる。「キラッと光って見えたから、偶然だよ」『光ったって。目を凝らしても、何も見えないけどな』 渋い顔をし、辺りをキョロキョロする千秋につい――「それは困るな。俺が迷子になったら捜せないじゃないか」 笑いながら告げてみた。貝殻の色と同じ白のパーカーを着てる今なら、千秋にだって捜せそうな気がするけどね。 繋いでいた手にぎゅっと力を入れてから名残惜しげに放して、貝殻にロウソクをセットすべく足元にバケツを置き、ポケットからいつも持ち歩いてるライターを取り出した。 火を点ける様子を同じように屈み込み、膝を両手で抱えながらじっと見守る千秋。『ありがとね、穂高さん』「どういたしまして」 たったこれだけのことにお礼を言ってくれるなんて、律儀だなと思っていたら。『……大好き』 少しだけ照れが混じった言葉を唐突に告げられ、そのまま固まってしまった俺――目の前にあるロウソクの火がゆらゆらと揺らめく状態は、自分の心の中にある火とリンクしていて、手にしていたライターを意味なくぎゅっと握りしめる。 以前は強請らないと言ってくれなかった言葉だったのに、不意に言われてしまうと、体が火